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2003年6月23日

原口総合法律事務所
弁護士  原口 薫

新会社更生法は、(1)手続の迅速化、(2)手続の合理化、および(3)再建手法の強化を目的として改正されたものですが、特に以下の点で債権回収、金融、証券化実務にあたえる影響は大きいものと思われます。

I 保全段階
1.包括的禁止命令
従来から、ローンの債務者や社債の発行体に対して会社更生法の申し立てがなされると、裁判所は更生債権などに基づく強制執行、仮差押、仮処分もしくは担保権の実行としての競売手続の中止を命ずることができましたが、この点は現行法でも維持されています(新会社更生法24条第1項および第2項)。

しかし、この中止命令は個別の資産に対する個別の担保権などの実行に基づく手続を個別に中止するものでした。

新法の下では、かかる個別の中止命令に加え、裁判所はすべての更生債権等に基づく全ての担保権などの実行手続の中止を命ずることができることになりました(新会社更生法25条)。

この包括的禁止命令は民事再生法上の包括禁止命令の制度(同法27条)と類似の制度ですが、民事再生手続と異なり担保権の実行としての競売の手続もその対象としている点に注意する必要があります。
2.中止した強制執行等の取り消し制度
さらに、新法のもとでは、更生会社の事業の継続のために、中止された強制執行等を取り消す制度も創設されました(同法24条第5項本文)。

II 更生手続開始決定後
1.更生財産の時価評価
更生開始決定が下されると、管財人は更生会社に属する一切の財産につき、その価額を評定しなければならず(同法83条1項)、評価を完了したときは、直ちに更生手続開始の時における貸借対照表および財産目録を作成し、裁判所に提出しなければなりません(同条第3項)。

この財産の評定基準について、かっては会社の事業を継続するものとして評価しなければならないとされ(旧法第177条第2項)、また更生担保権にかかる担保権の目的である財産の評価は、会社の事業が継続するものとして評定された更生手続開始の時における価額とされていました(旧法124条の二)。

このことから、旧法のもとでは更生会社の価値および更生担保権の価値はいわゆる企業継続価値(ゴーイング・コンサーン・バリュー)によるものと解されていました。

しかし、更生手続開始時には更生会社の収益力は極めて低下した状態にあるのが一般的であって、企業が将来生み出すべき収益を基礎として算定される継続的企業価値を算定することは極めて困難であり、管財人に不可能を強いるものであるという批判がなされていました。

そこで、新法では更生会社の財産の評定および更生担保権の価値を、更生手続開始時における時価を基準とするものに改めました(新法83条第2項、第2項10号)。

新法の下ではこの「時価」をどのように算定するか、がもっとも重要な問題となると思われます(事業再生研究機構財産評定委員会編「新しい会社更生手続の「時価マニュアル」2003年6月6日発行予定、85ページ参照)。

現在存在する考え方としては、大別して、(1)会社財産を評価するのであるから会計上の時価を基準とすべきであるというもの(会計時価説)と、(2)更生担保権の評価もするものであるから、すくなくとも更生担保権の目的となる財産については処分価額を基準とするという考え(処分価額説)があります。

債権者側から見ると、更生会社の債権のために担保権の実行が制約されるのであるから、更生計画が承認されるためには少なくとも担保権が実行された場合に債権者が得られる価値以上の価値が得られなければ再生の見込みがあるとはいえない、といえましょう。

この処分価額説の中でも、処分価額の内容について、(2A) 更生担保権の権利の範囲を画する評価基準としての時価は、担保権の把握する価値が目的物の交換価値であるから、目的物の処分価格を基準とするものであり、その処分価格は担保権の実行による強制競売がなされた場合の価額である、という考えと、(2B) 実際上の担保権の実行は任意処分によるので、任意処分がなされた場合の価額によるべきである、という考えに分かれます。

以上のように、時価の評価基準自体が未だ定まっておらず、更生担保権の実際の評価に当たっては更生管財人と更生担保権者の間の交渉が相当に長期化する可能性がありましょう。
2.更生担保権の消滅請求 
更生手続が開始されると、更生担保権については、更生手続によらなければ、弁済をし、弁財を受け、その他これを消滅させる行為をすることはできず(新法47条第1項)、更生担保権にかかる担保権については、更生計画に基づいて更生担保権を弁済するか、更生計画によって権利を変更するのでなければ、これを消滅させることができないのが原則です。

しかし、更生計画認可前の早期の段階で、営業譲渡を行うことが更生会社の事業の維持更生を図る手段として必要である場合(新法第46条参照)等に、当該営業譲渡の対象財産に担保権が設定されていると、事実上営業譲渡が困難となることなどから、更生担保権者の利益を擁護しつつ、担保権を更生手続きによらずに消滅させる制度が新たに導入されました(新法104条から112条)。

この制度の下において、管財人は更生会社の特定の財産に相当する金銭を裁判所に納付することによって当該財産上の担保権を消滅させることができます。
その後に更生計画が認可された場合には裁判所に納付された金銭等を原資として管財人が更生計画の定めに従った弁済を行い、更生計画が認可されずに更生手続が終了した場合には裁判所が納付された金銭について配当等の手続を実施することになります。

ここでは以下の2点にご注意ください。

A.更生担保権の価値自体は、更生手続の開始時における時価により定まり、この更生担保権の消滅請求により直ちに更生担保権が消滅するものではありません。

B.管財人の担保目的物の価格の納付により、担保目的物上の担保権は消滅するものの、更生担保権の弁済はあくまで更生計画(計画が認可された場合)または配当手続き(計画が認可されなかった場合)に基づいて行われます。
したがって、担保権が消滅しても更生担保権について直ちに配当が行われるわけではありません。

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