SAIKEN-KAISYU.INFO
債権回収インフォメーション
ホームサービス一覧掲載企業一覧解説記事オピニオンリンク集
解説記事 > 会社更生法改正のポイント
2003年7月30日

原口総合法律事務所
弁護士  原口 薫

1 はじめに
昨年12月6日に成立し、同月13日に交付された新しい会社更生法(以下、「新法」と略す)は、その附則第1条において、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとされている。以下は、新法の改正ポイントのまとめである。
※ 今回のレポートは、「新会社更生法の要点(1)」(NBL No.753 8頁)、「新しい会社更生法の概要(1)」(金融法務事情 No.1664 69頁)に基づいて作成した。

2 改正の背景
会社更生法改正の背景となった事情は次のとおりである。

第1に、民事再生法が平成11年に成立し、翌12年4月から施行されたことである。民事再生法は、再建型倒産処理手続の基本法と位置付けられ、会社更生法上の制度を随所に取り入れるとともに、旧和議法に比べ手続き全般を格段に整備した。この民事再生法の成立・施行により、一方で、基本法である民事再生法に存在する制度について横並びの改正を検討する必要が生ずることとなった。他方で、再生手続と比べて手続に時間がかかりすぎる更生手続の短所が際立つこととなって、更生手続を迅速化すべき要請がより強まることとなった。

第2に、倒産処理実務の運用の変化によって、更生手続のあり方を検討する上で、新たな制度整備の必要が生じたことである。バブル経済崩壊後の経済停滞状況が長期化したことにより、大規模株式会社が倒産状態に陥る事案が激増した。更生手続・再生手続といった法的倒産処理手続のみならず、私的整理も含めて、その処理過程でこれまでにない倒産処理の手法が用いられたり(早期の営業譲渡、会社分割、デッド・エクイティ・スワップ等の活用)、社債発行会社の倒産処理の過程で社債権者の取り扱いが問題となるなど、新たな現象が生じている。このような変化が新たな制度整備のニーズを生じさせたのである。

3 改正事項
今回の改正は、上記の背景のもとに、更生手続の迅速化・合理化を図るとともに、再建手法を強化して、これを現代の経済社会に適合した機能的なものに改めるものである。以下、改正事項のうち主要なものを、更生手続の迅速化に資するもの、更生手続の合理化に資するもの、再建手法の強化に資するものに分けて説明する。

1.更生手続の迅速化
(1)手続開始要件の緩和(41条1項3号)
現行の会社更生法では(以下、「現行法」と略)、38条5号で、「更生の見込みがないとき」を申立ての棄却事由(更生手続開始の条件)としている。しかし、「更生の見込み」の有無という経済的事項に関する予測判断を要求することが、開始決定されるまでに時間を要する原因となっている。そこで、民事再生法と同様、「事業の継続を内容とする更生計画案の作成もしくは可決の見込み又は事業の継続を内容とする更生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき」を開始の条件としている。
(2)更生計画案の提出時期の限定(184条第3項)
現行法189条第1項は、更生計画案の提出時期の上限についてなんらの制約も設けていない。新法では、更生計画案の提出が遅延する事態を防ぐため、裁判所の定める更生計画案の提出時期を、更生手続開始の決定の日から原則として1年以内としている。
(3)書面による更生債権等の調査・確定手続の導入(第5章第3節)
現行法では、利害関係人が裁判所の定めた期日に一堂に会して異議を述べあう方式を採用する。これに対し新法では、更生債権等の調査・確定手続を簡素・合理化するため、民事再生法と同様、管財人の作成する認否書およびその他の利害関係人が作成する書面による異議に基づいてする書面方式に改めている。
(4)担保権の目的である財産の価額の争いについての簡易な決定手続の創設(第153条から155条まで)
更生債権の確定手続のうち、実務上時間を要するのは、更生担保権の確定手続における担保権の目的財産の価額の争いである。そこで、この争いを更生担保権確定訴訟において解決する現行法の方式を改め、簡易な決定手続により確定させる制度を設けた。
(5)更生計画案の可決要件の緩和(第196条第5項)
現行法第205条の定める更生計画案の可決要件は厳格に過ぎるため、更生計画案の提出が遅延する原因となっていた。そこで可決要件を次のように緩和した。(a)一般更生債権者については、議決権総額の3分の2以上から2分の1を超える議決権を有する者の同意に、(b)更生担保権者について期限の猶予の定めをする場合には、議決権総額の4分の3以上から3分の2以上の議決権を有する者の同意に、(c)更生担保権者について減免等の定めをする場合には、議決権総額の5分の4以上から4分の3以上の議決権を有する者の同意に、(d)清算的更生計画案については更生担保権者の全員の同意から議決権総額の10分の9以上の議決権を有する者の同意に、それぞれ緩和している。
(6)手続の終結時期の早期化(第239条第1項第2号)
現行法第272条は、更生手続の終結決定の時期について、更生計画が遂行されたとき、または計画が遂行されることが確実であると認めるに至ったときとしているが、裁判所がこの認定に慎重となり、手続が長引く事案がある。そこで新法では、更生計画の定めによって認められた金銭債権の総額の3分の2以上の額の弁済がされれば原則として更生手続終結の決定をしなければならないとし、手続き終結の遅延を防止している。

2.更生手続の合理化
(1)東京地裁および大阪地裁の競合管轄の創設(第5条第2項第6号)
現行法6条は、定款・商業登記上の本店所在地の地方裁判所のみに更生事件の管轄を認めている。新法では、管轄裁判所を拡大し、手続の迅速かつ円滑な遂行を図るため、専門的な処理体制の整った東京地裁・大阪地裁に更生事件についての全国的な管轄を認めた。
(2)事件関係書類の閲覧・謄写規定の整備(第14条および第15条)
現行法上この点についての総則的規定が存在せず、閲覧・謄写の可否についての実務上の取り扱いも区々であったため、手続の透明性を確保するため、規定が整備された。
(3)更生債権者委員会等の制度の創設(第117条から121条まで)
更生債権者等の意思を更生手続に反映させる途を拡大するため、更生債権者委員会、更生担保権者委員会および株主等委員会の制度を設け、手続き上の各種権限を認めた。
(4)社債権者の手続参加規程の創設(第190条)
社債権者は更生手続において議決権を積極的に行使しないのが通常であるため、社債が更生会社の債務の相当部分を占める場合、たとえ合理的な更生計画案でも可決することが出来ないという不都合が指摘されていた。そこで、社債権者について議決権行使の申し出の制度を設け、申し出をしない社債権者の議決権を更生計画案の可決要件の母数から控除することとし、上記の不都合を回避した。
(5)財産評定および担保権評価の基準の明確化(第2条第10項本文・第83条第2項)
現行法第124条の2、第177条第2項は、財産評定および更生担保権評価の基準につき、更生手続開始時の継続企業価値によるべきものとしている。しかし、かかる基準により個々の財産の価額を算定することは困難であるため、新法では更生手続開始時における時価を基準とした。
(6)更生計画による弁済期間の上限の短縮(第168条第5項)
現行法第213条は、更生計画における債務の弁済期限の上限を20年としているが、これは現代の経済社会の実情に合わないため、新法では15年に上限を短縮している。
(7)書面等投票の制度の創設(第189条第2項第2号・第3号)
現行法では、更生計画案の決議は、関係人集会により行われなければならないとされている。しかし、利害関係人が多数にのぼり集会を開催できない場合や、遠隔地に居住するため集会に出席することが困難である利害関係人も存在するので、新法では書面による議決権行使を認めた。

3.再建手法の強化
(1)包括的禁止命令の制度の創設(第25条から第27条まで)
現行法第37条の認める、保全段階における個別の強制執行等の手続に対する中止命令では、強制執行等の手続が更生手続開始の申立て直後に頻発した場合に手続の円滑な進行を図れない。そこで新法では、更生会社の財産に対する強制執行を一律に禁止する包括的禁止命令の制度を設けている。
(2)保全管理人の行為により生じた請求権の共益債権化(第128条第1項)
現行法第119条の3は、保全段階において保全管理人等が裁判所の許可を得て、資金の借り入れ、原材料の購入その他の行為をしたときは、その行為によって生じた請求権は共益債権になるとする。新法では、保全段階での事業継続を一層円滑にするため、保全管理人が権限に基づいてした行為により生じた請求権は、裁判所の許可を要することなく当然に共益債権になるとしている。
(3)経営責任の無い取締役等は管財人等に選任できることを明確化(第67条第3項・第70条第1項ただし書・第30条第2項ただし書・第33条第1項ただし書)
現行法(94条等)の下でも、管財人の職務を行うに適した者なら更生会社の取締役等を管財人に選任できるとされているが、実務上はこれらの者を管財人には一切選任しない運用が定着している。新法では、管財人の欠格事由を法定することにより、更生会社の取締役等であっても、経営責任が無く、裁判所が適任と認めた者は、管財人に選任できることを明確化した。
(4)更生計画認可前の営業譲渡の制度の創設(第46条)
現行法では、更生計画認可前に更生会社が営業譲渡できるか否かは明確でなかった。新法では、更生計画認可前でも更生債権者等からの意見聴取を踏まえた裁判所の許可を得ることにより、営業譲渡を許容する制度を設けている。
(5)担保権消滅制度の創設(第104条から112条まで)
現行法においては、161条の2に規定する商事留置権の消滅請求制度を除き、更生手続開始後、更生計画によることなく更生担保権にかかる担保権を消滅させる制度は存在しなかった。新法では、担保付物件の早期売却等を可能にするため、担保目的物の価額に相当する金銭を裁判所に納付することにより、担保権を消滅させることが出来る制度を設けた。
(6)更生計画により発行される社債の償還期限の自由化(第168条第6項)
現行法においては、更生計画により発行される社債の償還期限の上限は20年とされていた。これに対し新法では、再建の一手段として更生計画による社債の発行を活用するため、更生計画により発行される社債の償還期限の制限を撤廃した。

■ 新会社更生手続(図) ※PDF

【企業紹介】
■ 原口総合法律事務所
【関連記事】
■ 不良債権化した消費者ローン債権の流動化とサービサーによる取立業務の限界 解説記事2003年9月5日
■ 会社更生法改正のポイント 解説記事2003年7月30日
■ 会社更生法改正について 解説記事2003年6月23日

会社概要問い合わせ