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解説記事 > 不良債権化した消費者ローン債権の流動化とサービサーによる取立業務の限界
2003年9月5日

原口総合法律事務所
弁護士  原口 薫

1.はじめに
最近不良債権化した消費者ローン債権を流動化したいが、どうすればよいのですか、という相談をよく受けます。

消費者ローン債権の流動化の手法には様々なものがありますが、それとの関連で、サービサー法上のサービサーによる債権取立の有用性とその法律上の限界について説明させていただきたいと思います。

2.消費者ローンの不良債権化と流動化のニーズ
最近は不況の影響で、消費者ローンの弁済を滞納する債務者が急増し、不良債権化した消費者ローン債権が激増しています。

消費者ローン債権が不良化した場合、法人税法上消費者ローン会社は直ちに全ての債権を無税償却できず、管理コストをかけ、貸倒引当金を計上してまで保有しているのが現状です。

これまでは不良化した消費者ローン債権の買い手がなかなか見つからなかったのです。買い手さえ現れれば、消費者金融会社は譲渡代金(額面の5%程度)を直ちに取得できるばかりか、差額を全額損金とすることが可能となり、課税所得を大幅に減少させることができるのです。

3.消費者ローン債権の流動化とサービサーの機能
では、なぜこれまで不良債権化した消費者ローン債権の買い手がなかなか現れなかったのでしょう。その大きな理由のひとつは譲り受けた債権を回収する者が存在しなかったからなのです。

流動化の方法は、簡略化すると、消費者金融業者(オリジネーター)から倒産隔離された特別目的会社(SPC)に消費者ローン債権を譲渡し、SPCは譲り受けた債権を担保に金融機関からノン・リコース・ローンの借り入れをしたり、社債を発行して債権の譲渡代金を支払い、その後に債権の回収金をもってノン・リコース・ローンや社債の元利の返済に充当することになります。

このSPCは債権の流動化のために設立される箱のようなもので、SPCに代わって債権を回収する者(サービサー)が必要となります。

不良債権化するまえの正常債権を流動化する場合、債権回収はオリジネーターがもっとも得意とするところですので、オリジネーター自身がサービサーとして債権を回収するのが通例です。

しかし、不良債権化した消費者ローン債権はもはやオリジネーター自身が回収することが困難なものですので、オリジネーターをサービサーに選任するメリットはあまり多くありません。

のみならず、不良債権の取立委任は原則として禁止されており(弁護士法72条)、オリジネーターによる不良債権の回収は弁護士法に違反するともいえましょう。

それでは弁護士法上唯一不良債権の取立てが可能な弁護士はどうか、というと消費者ローン債権のように通常最高額が50万円程度で、債務者が数千人、全国各地に散らばっているものを回収する意思と能力を有する弁護士は存在しないのが現状でしょう。

それでは債権回収の切り札として登場した債権管理回収業に関する特別措置法(平成10年法律126号)(サービサー法)における債権管理回収業者(サービサー法上のサービサー)はどうでしょうか。

4.消費者ローン債権の回収とサービサー法によるサービサー
サービサー法の下で債権管理回収業者として営業許可を取得したものは、弁護士法72条の規定にかかわらず、不良債権を回収することができます(サービサー法第1条)。この不良債権には現在では不良化した消費者ローンも含まれます(サービサー法第2条1号リ)。

しかし、つい最近まで事実上サービサー法上のサービサーは消費者ローン債権を取り立てることができなかったのです。それは消費者ローン債権の金利が非常に高いこと、それに伴う非合法な取立てが懸念されたことなどが理由として挙げられます。

5.消費者ローン債権の金利
消費者ローン債権はご承知のとおり個人の債務者に対して無担保で貸しつけるもので、極めてリスクの高いものです。したがって、その金利もリスクの高さに比例してかなり高額となっています。 この高金利ローンの取立てが多数の債務者の生活を破壊し、自殺者まで生み出したことから、高金利ローンについてはさまざまな法律による規制が加えられています。 この法規制のなかで、きわめて重要なのが出資法、貸し金業法および利息制限法による規制です。

簡単に言えば、出資法は年利29.2%以上の金利(刑罰金利)をとる消費者金融業者を処罰するとともに、かかる利息の定めがある消費者ローン債権自体を無効とします(民法90条参照)。

利息制限法は、元本額10万円未満については20%、10万円以上100万円以下については18%、100万円以上については15%を超える利息(制限超過利息)の定めを無効とし、この無効の意味について最高裁の判例は、利息が無効なのだから制限超過利息は元本に充当され、残存元本がなくなった場合、債務者に過払い部分を返還すべきであると判示しています。

貸し金業法は、出資法の刑罰金利の範囲内で、任意に支払われた制限超過利息を、利息制限法の規定および最高裁の判例にかかわらず、元本に充当する必要もなく、したがって返還に応じる必要もないとしています(みなし弁済)。

この貸し金業法のみなし弁済は、立法当時、貸付金額や金利を明示する契約書をかわすことなく貸付をした後で、当初の貸付額の数倍の元本や利息を請求する業者が絶えるなかったので、業者に契約内容の文書化を強制しようとしました。しかし、ただ強制するだけでは実効性に乏しいと考えられたので、いわばアメとムチとして、契約内容を文書にして債務者に交付するなど、債務者の保護をはかったものに限り、利息制限法を超える利息を取得することができる、としたものです。

この結果、現在では全ての貸し金業者が利息制限法を超える利息の約定をしています。

6.サービサーによる消費者ローン債権の回収と消費者ローン債権の流動化
平成13年以前のサービサー法第18条5項は次のように規定していました。

「債権回収会社は、特定金銭債権に係る債務であって利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第一条第一項に定める利息の制限額を超える利息(同法第三条の規定によって利息とみなされる金銭を含む。以下この項において同じ。)の支払を伴い、又はその不履行による賠償額の予定が同法第四条に定める制限額を超えるものについて、債務者等に対し、当該制限額を超える利息又は賠償額の支払を要求してはならない。」

この規定をそのまま読むと、サービサー法上のサービサー(債権回収会社)は制限超過利息の支払いの請求をすることが禁止されているだけであるかに見えました。

しかし、この規定はサービサーの導入に当たり、国会でも相当に論議を呼んだところであって、立法過程における法案提出議員間の協議でも明らかにされているとおり、利息制限法に違反する約定のある債権全体の履行を禁止する趣旨であって、制限超過利息の請求のみならず、利息制限法の制限超過利息に引きなおした利息の請求もこの規定によって禁止されていました(法務省債権回収監督室編「Q&Aサービサー法」商亊法務研究会平成11年6月26日226頁)。

このような行為規制が課された理由として、法務省は「債権管理回収業が、暴力団等反社会的勢力の介入によるトラブルなどの起こりがちな分野に弁護法の特例として新たに誕生した業態であり、とくに債務者の保護の徹底を図る必要があることに加え、金融再生の一翼を担うものとして、特に強度の廉潔性と遵法性を保持させることにより、債権管理回収業に対する国民の信頼を確保する必要があると考えられたことによる」 と説明をしていました(法務省・前掲)。

このような規制の結果、サービサー法上のサービサーは消費者ローン債権(全て利息制限法を超える利息の約定がある)の元本および利息の請求をすることが一切禁止されていました。

このためサービサー法上のサービサーは消費者ローンの流動化に当たり、サービサーあるいはバックアップ・サービサーとして十分に機能することができませんでした。

しかし、その後平成13年同法18条5項は次のように改正されました。

「債権回収会社は、特定金銭債権に係る債務であって利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第一条第一項に定める利息の制限額を超える利息(同法第三条の規定によって利息とみなされる金銭を含む。以下この項において同じ。)の支払を伴い、又はその不履行による賠償額の予定が同法第四条に定める制限額を超えるものについて、債務者等に対し、当該制限額を超える利息又は賠償額の支払を要求してはならない。」

ここで重要なのはこれまでは「その履行を要求してはならない」とあったのを、「当該制限額を超える利息または賠償額の支払いを要求してはならない」と改められたことです。

この点について法務省はサービサー法施行後の消費者ローン債権の回収サービスとの必要性と弊害を勘案した結果、利息制限法に引きなおして計算をするのであれば、サービサー法のサービサーにも消費者ローンの回収を認めてもかまわないと判断したとのことです。

したがって現在ではサービサー法上のサービサーも消費者ローン債権の回収に従事することができることとなり、消費者ローンの流動化、証券化においてサービサー法上のサービサーの果たす役割は飛躍的に高まりました。

しかし、ここで注意をしなければならないのは、サービサー法上のサービサーは消費者ローン債権を額面通り回収することはできず、必ず利息制限法に引きなおして計算した額を請求しなければならない、という点です。

すなわち、オリジネーターや弁護士であれば、貸金業法上の要件を満たす限り、請求することが可能な制限超過利息をサービサー法上のサービサーは一切請求することができないのです。

この点がサービサー法上のサービサーによる消費者ローン債権の回収の大きな限界といえましょう。

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