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2006年8月25日

ナレッジマネジメントジャパン株式会社
代表取締役 / 与信管理コンサルタント
牧野 和彦

■ 英国の債権回収事情
今回は、英国の債権回収の最近の傾向について書きたいと思う。

Credit Services Association(CSA ※英国の与信管理、債権回収の業界団体)によれば、英国ではコレクション・エージェンシーを活用する企業が、早急な回収を望むあまり、訴訟を起こすケースが増えている。

コレクション・エージェンシーの活用は、一般的にはamicable phase(友好的な解決段階)と呼ばれ、legal phase(訴訟による解決段階)と区別される。もちろん、訴訟を起こす前にコレクション・エージェンシーを活用するのが通常だ。

そのために、コレクション・エージェンシーのほとんどは法律事務所と提携するか、社内に弁護士を抱えており、友好的な回収から訴訟まで総合的に業務を行っている。

CSAによれば、訴訟に移行するタイミングがここ1年で劇的に早くなっているのだ。かつては、2〜3ヵ月はコレクション・エージェンシーの交渉による回収をすることが一般的だった。

少なくとも1ヶ月程度は猶予があった。

しかし、最近ではそのタイミングが1ヶ月どころか、回収代行の依頼から数日で、訴訟に切り替えるように指示を出す企業が増えている。ひどい場合には、依頼と同時に訴訟をするように指示するケースもある。

また、強制破産を仕掛ける債権者も増えており、8割以上は成功裡に債務者を破産させている。

訴訟移行のタイミングが早まった理由はいくつかあるのだが、まず英国企業が以前にも増してキャッシュフローを重視し始めたことがある。

そして、支払を遅延する顧客(債務者)との関係を気にしなくなったこと。つまり、支払を遅延する企業とは、将来的に取引を再開することはないと判断し、法的手段を講じる企業が増えたのだ。

更には、支払遅延や不良債権を重要な経営課題と捉える経営者が大企業、中小企業を問わず、増えてきたことも要因として挙げられる。

ちなみに、英国企業が債権回収を依頼する債権額の平均は、2,400ポンド(約52万円)で、200ポンド(約4万円)から11,500ポンド(約250万円)の範囲が中心。

中には、330万ポンド(約7億2千万円)と言う高額債権もある。

CSAの会員企業だけでも年間2千万件以上の債権回収代行を受託しており、前年対比で7割も増加した。大企業の4割、中小企業の5割以上は、遅延債権の回収にコレクション・エージェンシーを活用している。

日本企業は、英国企業が早急に訴訟を講じる最近の傾向に対して、特に違和感を覚えないだろう。なぜなら、コレクション・エージェンシーのない日本では自社で任意に回収するか、法的手段を講じて強制的に回収するかの2つの選択肢しかないからだ。

むしろ、第三者を活用して任意に回収を行う利点や意義を見出せない企業が多いはずだ。

確かに、早い段階で訴訟を起こせば回収率は上がるはずだ。初期の遅延であれば、債務者の財政状態もそれほど逼迫していないことが多いからだ。

しかし、自社で回収する場合はもちろん、コレクション・エージェンシーに回収させるよりも、コストは当然高くつく。訴訟費用のほかに弁護士報酬も必要になるからだ。

債権額にもよるが、債権者の手元に残るのは半分以下になるケースもあるはずだ。早期の訴訟による回収率の増加だけでなく、訴訟関連のコスト増も計算して最終的な判断すべきである。

あまり知られていないことだが、遅延債権の多くは交渉により回収できることが多い。また、支払能力のない債務者からの回収は、法的手段を講じても同じ結果になることが多い。

訴訟を起こす前には、債務者の支払能力と支払意思を冷静に分析して、対応策を検討すべきだ。

◆今日のまとめ◆
(1)英国ではコレクション・エージェンシーを活用する企業が、早急な回収を望むあまり、早い段階で訴訟を起こすケースが増えている。
(2)早期に法的手段をとれば、回収率は上がるが、債権者の手元に残る金額は減少する可能性がある。
(3)訴訟への移行は、債務者の支払能力と支払意思を冷静に分析して、判断すべき。

※「英国の債権回収事情」は、「ニュースで学ぶ与信管理と債権回収」より、許可を得て転載いたしました。

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